【建築名】如庵
過去問
問題
如庵(犬山市)は、17世紀にもと建仁寺内に造立された、大小五つの窓や躙口の配置が特徴的な茶室である。
正解は ○
如庵(犬山市)は、織田信長の弟である織田有楽斎によって、もとは京都の建仁寺内に造立された茶室といわれ、大小五つの窓や躙口の配置が特徴的である。現在は犬山城(愛知県)下に移築されている。
実物写真
https://www.aichi-now.jp/spots/detail/179/
覚えるためのポイント
如庵の主な特徴は以下の3点である。
第一に、2畳台目の小さな茶室に大小5つの窓と躙口を巧みに配置し、空間に変化を持たせている。
第二に、高さ約65センチメートル、幅約60センチメートルの躙口は、茶道の平等精神を象徴している。
第三に、建仁寺から犬山の有楽苑に移築された国宝建造物である。
詳しい解説
如庵(じょあん)は、日本の茶道史上最も重要な茶室の一つとして知られています。この歴史的建造物は、織田信長の実弟である織田有楽斎(うらくさい)によって建立されました。もともとは京都の名刹・建仁寺の境内に建てられましたが、現在は愛知県犬山市の有楽苑内に移築されており、国宝に指定されています。
如庵の建築的特徴は、その独創的な空間構成にあります。茶室の床面積はわずか二畳台目ですが、大小5つの窓と躙口(にじりぐち)の絶妙な配置により、空間に奥行きと変化を持たせています。特に注目すべきは、これらの開口部が光と影のコントラストを生み出し、季節や時間帯によって異なる表情を見せる点です。この繊細な光のデザインは、茶室における重要な要素である「侘び寂び」の美意識を見事に表現しています。
躙口は高さ約65センチメートル、幅約60センチメートルの小さな入口で、茶室に入る際には頭を下げて謙虚な姿勢で入らなければなりません。これは、身分の高低に関係なく、茶室内では皆が平等であるという茶道の精神を象徴しています。また、躙口の配置は、茶室内の動線を考慮して緻密に計算されており、亭主と客の動きが自然に流れるよう工夫されています。
窓の配置も特筆すべき点です。大小様々な高さと形状の窓は、単なる採光や通風の機能を超えて、茶室内の空間体験を豊かにする重要な役割を果たしています。例えば、高窓からは木々の緑や空の様子が切り取られて見え、季節の移ろいを感じさせます。また、低い位置に設けられた窓からは、庭の苔や石の配置が額縁のように切り取られ、自然との調和を図っています。
建築材料にも細心の注意が払われています。柱や床板には厳選された木材が使用され、壁は土壁で仕上げられています。これらの素材は時を経るごとに味わいを増し、現代でも建立当時の風情を色濃く残しています。特に、天井に用いられている竹材は、時間の経過とともに深い飴色に変化し、独特の雰囲気を醸し出しています。
如庵の設計には、織田有楽斎の茶道に対する深い造詣が反映されています。彼は武将でありながら、茶道を通じて平和と調和を追求した人物として知られています。如庵は、その精神性を空間として具現化した傑作と言えるでしょう。茶室内の各要素は、「和敬清寂」という茶道の理念を体現しており、訪れる人々に深い精神的体験を提供します。
移築の歴史も興味深い点です。元々京都の建仁寺にあった如庵が現在の場所に移されたのは、茶室を後世に残すための重要な保存措置でした。移築の際には、できる限り原形を保つよう細心の注意が払われ、建築の詳細な記録と共に慎重に作業が進められました。現在の有楽苑での再建に際しては、周囲の庭園も含めて、本来の茶室の雰囲気を最大限再現するよう配慮されています。
如庵は、現代においても茶道や建築を学ぶ人々にとって重要な研究対象となっています。その空間構成や意匠の特徴は、現代建築にも大きな示唆を与えており、ミニマリズムや空間の質に関する議論において、しばしば参照されます。また、文化財としての価値も高く、年間を通じて多くの見学者が訪れ、日本の伝統建築の精髄を体感する場となっています。
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