(一級建築士対策)絶対間違えない【厳島神社社殿】の覚え方

【実例】日本建築史

【建築名】厳島神社社殿

過去問

問題

厳島神社社殿(広島県)は、神体山とする宮島の弥山を祀るために島の海浜に設けられており、本殿は身舎の前後に庇を付けた両流造りの例である。

正解は ○

厳島神社社殿(広島県)は、神体山(神が宿る山)として宮島の海浜に建てられた社殿で、身舎(もや)(主要な柱に囲まれた家屋の中心部分)の前後に庇を付けた両流造りの本殿、拝殿、舞台等を回廊で結び、潮が満ちると海面に浮かんで見えるように配置した建築物である。

実物写真

https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/176402

覚えるためのポイント

厳島神社社殿(広島県)は、神体山(神が宿る山)として宮島の海浜に建てられた社殿で、身舎(もや)(主要な柱に囲まれた家屋の中心部分)の前後に庇を付けた両流造りの本殿、拝殿、舞台等を回廊で結び、潮が満ちると海面に浮かんで見えるように配置した建築物である。

詳しい解説

厳島神社社殿は、広島県廿日市市の宮島(厳島)に位置する日本を代表する神社建築です。1996年に世界文化遺産に登録され、その独特な建築様式と美しい景観で世界的に知られています。本稿では、この歴史的建造物の建築的特徴、歴史的背景、そして文化的意義について詳しく解説していきます。

【建築様式と構造的特徴】 厳島神社社殿は、神体山である弥山を祀るために海上に建設された特異な社殿建築です。その最も顕著な特徴は、潮の満ち引きによって様相が劇的に変化する点にあります。満潮時には社殿が海上に浮かんでいるように見え、干潮時には参拝者が干潟を歩いて社殿に近づくことができます。

社殿の主要な構造要素は以下の通りです:

  1. 本殿:身舎(もや)の前後に庇を付けた両流造りを採用しています。両流造りとは、屋根の棟が前後に流れる形式で、神社建築では最も格式の高い様式の一つとされています。
  2. 拝殿:参拝者が祈りを捧げる場所として、本殿の前面に配置されています。
  3. 舞台:神楽などの神事芸能を上演するための空間として設けられています。
  4. 回廊:これらの建物を結ぶ渡り廊下の役割を果たし、全体の統一感を生み出しています。

【建築技術と工夫】 海上に建つという特殊な環境に対応するため、以下のような建築技術が用いられています:

  1. 基礎構造:
  • 海中に打ち込まれた杭の上に建てられています
  • 潮の干満や波の影響に耐えられる強固な構造
  • 防腐・防蝕処理された木材の使用
  1. 建築材料:
  • 檜や杉などの耐久性の高い木材を選定
  • 海水に強い特殊な塗装や処理
  • 定期的な補修や部材交換を考慮した構造
  1. 排水システム:
  • 雨水や潮水を効率的に排出する工夫
  • 建物内部への浸水を防ぐ設計
  • 床下の通気性確保

【歴史的背景と変遷】 厳島神社の創建は12世紀とされ、平安時代末期から鎌倉時代にかけて、平清盛の庇護のもとで現在の壮大な社殿建築が整備されました。以来、幾度もの修理や改築を経ながらも、その基本的な構造と様式は800年以上にわたって維持されてきました。

主な歴史的出来事:

  • 1168年:現在の社殿の原型が完成
  • 1325年:台風による大規模な被害と修復
  • 1555年:毛利元就による修理
  • 1874年:明治期の大規模修理
  • 1945年:戦災を免れる
  • 1996年:世界文化遺産登録

【建築的意義と象徴性】 厳島神社社殿の建築には、以下のような深い意味が込められています:

  1. 自然との調和:
  • 海と山の境界に位置することで、自然との共生を表現
  • 潮の満ち引きによって変化する景観が、神の世界と人の世界の境界を象徴
  • 背後の森林(神体山)との視覚的な連続性
  1. 空間構成の象徴性:
  • 本殿から神体山への軸線配置
  • 海上に浮かぶ社殿が表現する神聖性
  • 回廊による空間の囲い込みが作る神域の表現
  1. 美的価値:
  • 海面に映る社殿の反射が作り出す幻想的な景観
  • 朱色の社殿と青い海、緑の山との色彩的調和
  • 建築物の優美な曲線と自然景観との調和

【保存と継承】 現代における厳島神社社殿の保存と維持には、以下のような取り組みが行われています:

  1. 定期的な調査と修理:
  • 専門家による定期的な建造物調査
  • 伝統的な技法を用いた修理・修復
  • 新技術の導入による保存方法の改善
  1. 環境保全:
  • 周辺海域の水質管理
  • 森林(神体山)の保全
  • 観光客による影響の軽減対策
  1. 文化的価値の継承:
  • 伝統的建築技術の記録と継承
  • 若手技術者の育成
  • 一般公開による理解促進

以上のように、厳島神社社殿は単なる建築物としてだけでなく、日本の伝統的な建築技術、自然観、そして精神文化を体現する貴重な文化遺産として、現代に至るまで大切に保存され続けています。その独特な立地と建築様式は、世界的にも類を見ない特徴を持ち、建築史上極めて重要な位置を占めています。

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