【建築名】ブラジリア
過去問
問題
ブラジルの首都であるブラジリアは、ジェット機形の平面形状をもち、機体の胴体に相当する部分を政治的中枢地域、翼に相当する部分を住居地域とする計画案に基づいている。
正解は ○
ブラジリアは、高原の未開の地に建設された計画都市であり、ブラジル人建築家のルシオ・コスタの設計による都市のマスタープランは、ジェット機形をしており、機体の胴体部分に、国会議事堂や行政庁舎、最高裁判所等の政治的中枢地域が並び、翼の部分は住宅地域となっている。
実物写真
https://ameblo.jp/toshheritage/entry-12380738240.html
覚えるためのポイント
ブラジリアの都市計画の主な特徴は以下の3点である。
- 未開の高原地に建設された計画都市である。
- ルシオ・コスタによるマスタープランはジェット機形である。
- 胴体部分に政治的中枢機能、翼部分に住居地域を配置している。
詳しい解説
ブラジリアは、1960年代に建設された壮大な計画都市であり、現代都市計画の歴史において最も注目すべき事例の一つとして世界的に認識されています。この都市の誕生は、ブラジルの近代化と国家としての自信を象徴する重要なプロジェクトでした。
都市の立地と背景: ブラジリアは、ブラジルの内陸部に位置する高原地帯に建設されました。この地域は、建設開始前はほとんど未開発の状態でした。標高約1,100メートルに位置し、年間を通じて比較的穏やかな気候を享受できる立地が選ばれました。この新首都建設計画は、ジュセリーノ・クビチェック大統領の「50年の発展を5年で実現する」という大胆な政策の一環として推進されました。
都市計画コンペと設計者: 1957年に開催された国際コンペティションで、ブラジル人建築家のルシオ・コスタの案が採用されました。コスタは、近代建築運動の理念を都市計画の規模で実現することを目指しました。彼の計画案は、機能性と象徴性を見事に調和させた革新的なものでした。
マスタープランの特徴: コスタの設計による都市のマスタープランは、上空から見るとジェット機の形状を想起させる特徴的な形態を持っています。この形状は単なる視覚的な効果だけでなく、都市機能の効率的な配置を実現するための合理的な選択でした。
都市の構造と機能配置: ジェット機の胴体に相当する部分(モニュメンタル・アクシス)には、国家の中枢機能が集中しています。具体的には:
- 国会議事堂
- 連邦政府庁舎
- 最高裁判所
- 各省庁の建物
- 文化施設 これらの建物は、直線的な軸上に整然と配置され、権力の中心性と透明性を視覚的に表現しています。
一方、ジェット機の翼に相当する部分(居住軸)には、住宅地域が展開されています。この地域は:
- スーパーブロックと呼ばれる住居単位
- 地域ごとの商業施設
- 教育施設
- 医療施設
- レクリエーション施設 などが計画的に配置されています。
都市設計の特徴的な要素:
- ヒエラルキー化された道路システム
- 高速道路
- 主要幹線道路
- 区画道路
- 歩行者専用道路 これらが明確に分離されており、交通の効率性と安全性を確保しています。
- スーパーブロックシステム:
- 約300m四方の区画
- 6階建ての集合住宅
- 豊富な緑地空間
- コミュニティ施設 これらが一体となって、理想的な居住環境を形成しています。
- 公共空間の重視:
- 広大な中央緑地
- オープンスペース
- 公園
- プラザ これらが都市に開放感と快適性をもたらしています。
建築的特徴: ブラジリアの建築物の多くは、オスカー・ニーマイヤーによって設計されました。彼の設計は:
- 曲線を多用した有機的なフォルム
- コンクリートの可能性を追求した構造
- モダニズムの理念を体現したデザイン
- 地域性と普遍性の融合 これらの特徴により、独特の建築景観が形成されています。
歴史的評価と現代的意義: ブラジリアは1987年にユネスコ世界遺産に登録され、20世紀の都市計画と建築の傑作として国際的に高い評価を受けています。しかし、理想的な計画都市としての側面と、実際の都市生活における課題の両面があることも認識されています。
現代の課題:
- 人口増加による郊外の無秩序な発展
- 交通システムの限界
- 社会的分断
- 都市の持続可能性 これらの課題に対する解決策の模索が続いています。
このように、ブラジリアは20世紀の都市計画における壮大な実験であり、その成果と課題は現代の都市計画に多くの示唆を与えています。計画都市としての理想と現実の間で、常に進化を続けているといえるでしょう。
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