【建築物名】香港上海銀行本店

過去問

問題

「香港上海銀行本店（Norman Foster)」は、吊橋の工法を応用した構造の採用により、各階は、２列のマスト状の組柱の間が開放的な無柱空間となっている。

正解は ○

香港上海銀行本店は、高層ビル（47階建て）としては世界初となる吊り構造を採用しており、各階は２列に並んだ４本のマスト（船の帆柱）状の組柱の間が無柱空間となっている。

実物写真

https://www.trip-cafe510.com/entry/2021/10/05/%E3%80%90%E9%A6%99%E6%B8%AF%E3%80%91_%E4%B8%AD%E7%92%B0%E9%A7%85%E3%81%AE%E9%A6%99%E6%B8%AF%E4%B8%8A%E6%B5%B7%E9%8A%80%E8%A1%8C%EF%BC%88HSBC%E6%9C%AC%E5%BA%97%EF%BC%89%E3%81%A8%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83

覚えるためのポイント

• 世界初の吊り構造を採用した47階建ての高層ビルである。
• 2列に並んだ4本のマスト状の組柱により、各階に広大な無柱空間を実現している。
• 上から下への革新的な建設工法により、工期の大幅な短縮を達成している。

詳しい解説

香港上海銀行本店は、20世紀の近代建築史において最も画期的かつ革新的な構造設計を実現した建築物として、世界中の建築家や技術者から高い評価を受けています。1986年に完成したこの卓越した建築物は、世界的に著名な建築家であるノーマン・フォスター卿によって綿密に設計され、当時としては極めて挑戦的な試みとなる高層ビル（47階建て）における世界初の革新的な吊り構造を採用しています。

構造的特徴について詳細に見ていきましょう。建物の骨格として特筆すべきは、精密に計算された配置による2列の4本のマスト（船の帆柱）状の組柱です。これらの組柱は、単なる建物を支える構造物としてだけではなく、建築空間全体を形作る重要な要素としての役割を果たしています。各階の床は、これらの堅牢なマストから巧みに吊り下げられる形で支持されており、この画期的な構造システムにより、従来の高層ビルでは技術的に実現が極めて困難とされていた広大で開放的な無柱空間を見事に生み出すことに成功しています。

この革新的な吊り構造システムの採用には、複数の重要な建築的利点が存在します。最も顕著な利点として、床面積の効率的かつ柔軟な活用が可能となることが挙げられます。従来型の高層ビルでは、構造上不可欠な多数の柱が室内空間を分断し、空間利用の自由度を大きく制限することが一般的でしたが、この建物では画期的な構造システムにより、広々とした開放的な無柱空間を確保することで、多様なニーズに対応可能な柔軟性の高い空間利用を実現しています。

さらに、この先進的な構造システムは、地震や強風といった自然の力に対する高度な耐性も綿密に考慮されています。特殊な形状と周到な配置計画により設計されたマスト状の組柱は、横方向からの力に対して極めて優れた抵抗力を発揮します。加えて、革新的な吊り構造により床が支持されることで、建物全体としての適度な柔軟性が確保され、地震発生時の揺れを効果的かつ安全に吸収することが可能となっています。

建設プロセスにおいても、この構造システムは従来の工法を大きく革新するものでした。建物は通常とは異なる上から下への建設手順で進められ、まず堅固なマスト状の組柱が慎重に建設され、その後、各階の床が精密な計算に基づいて順次吊り下げられていきました。この画期的な工法により、建設期間の大幅な短縮と工事全体の効率化が見事に実現されました。

内部空間の特徴についても詳しく触れておく必要があります。革新的な無柱空間を最大限に活かし、各フロアは極めて高い自由度を持つ理想的なオフィススペースとして緻密に設計されています。建物全体を通して自然光を最大限に取り入れる工夫が随所になされており、天井高にも十分な余裕を持たせることで、格別に開放的で快適な空間が創出されています。さらに、エスカレーターやエレベーターなどの垂直動線も利用者の動きを徹底的に分析した上で効率的に配置され、大規模なオフィスビルとして求められる高度な機能性も余すことなく確保されています。

環境への配慮も、この建物における最も重要な特徴の一つとして挙げられます。建物全体を通して自然光を効果的に取り入れる革新的な設計により、照明エネルギーの大幅な削減が実現されています。また、建物の外装には最新の技術を駆使した高性能のガラスが採用され、熱負荷の効果的な低減にも大きく貢献しています。さらに、建物内の空調システムも最新の技術を用いて効率的に設計され、エネルギー消費の最適化が徹底的に図られています。

この画期的な建築物が完成した1986年当時、このような大規模な吊り構造の採用は世界的に見ても全く前例のない大胆な挑戦でした。その見事な成功は、建築技術の新たな可能性を力強く示すとともに、現代建築における技術革新の重要な象徴となりました。現在に至るまで、この建物の革新的な構造設計は世界中の数多くの建築家や技術者に大きな影響を与え続けています。

特に注目すべき点は、この革新的な構造設計が単なる技術的な実験や試みにとどまることなく、実用的なオフィスビルとして求められる高度な機能性を十分に備えている点です。日々の活発なビジネス活動の場として効果的に活用されながら、同時に建築技術の飛躍的な進歩を体現する記念碑的な建築物としての重要な役割も見事に果たしています。

香港上海銀行本店は、革新的な建築構造、優れた機能性を備えた空間設計、そして徹底した環境への配慮という、現代建築に求められる本質的な要素を極めて高い次元で実現した傑出した建築物といえます。その広範な影響力は現代の建築設計の様々な場面において今なお強く及び続けており、高層建築の新たな可能性を大きく広げた極めて重要な事例として、建築史に消えることのない大きな足跡を残しています。

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