(一級建築士対策)絶対間違えない【日野市立中央図書館】の覚え方

【実例】公共建築

【建築名】日野市立中央図書館

過去問

問題

朝霞市立図書館本館(埼玉県、1987年)は、成人開架と児童開架をL字型平面に振り分け、自習室を設けず、閲覧席を少数にするなど、貸出を重視した図書館である。

正解は ×

設問は、日野市立中央図書館(東京都、1973年)についての記述である。戦後に存在した勉強部屋型図書館を否定し、本来のサービスである資料の利用を追求した貸出型図書館を代表する図書館である。

朝霞市立図書館本館(埼玉県、1987)は、図書館の多様化・ネットワーク化の時代に対応すべく、床面積や開架冊数の量的拡大、館内読書や調べ物への対応という質的変化、住民の交流拠点としての位置付けの明確化など、高機能化した図書館の代表例である。

実物写真

https://sakuhin.info/japan/hino_tyuo_lib/

覚えるためのポイント

  • 戦後の図書館設計史において革新的な転換点となった施設である。
  • 成人向けと児童向けの開架スペースをL字型平面に効率的に配置している。
  • 勉強部屋型図書館を否定し、資料の利用を重視した貸出型図書館の代表例である。

詳しい解説

日野市立中央図書館(東京都、1973年)は、戦後の日本の図書館設計史において革新的な転換点となった画期的な施設である。この図書館が持つ革新性は、従来の図書館設計の常識を根本から覆し、新しい図書館サービスの在り方を提示した点にある。その影響力は建築史上極めて重要な意義を持ち、現代の図書館設計にも大きな示唆を与え続けている。

施設の空間構成において最も特徴的なのは、成人向けの開架スペースと児童向けの開架スペースをL字型平面に効率的に配置した点である。この独創的な空間構成は、単なる形態的な工夫以上の意味を持っている。L字型の平面計画により、成人利用者と子どもたちの活動空間を自然に分離しながらも、全体としての一体感を損なわない絶妙なバランスを実現している。この配置により、それぞれの利用者層に適した静寂性や活動性を確保しつつ、図書館全体としての機能的な統一性を保っている。さらに、この空間構成は、利用者の行動パターンや心理的な快適性にも配慮がなされており、自然な動きを促す効果も備えている。

動線計画においても、この図書館は卓越した特徴を持っている。エントランスからの動線が自然に開架スペースへと導かれ、利用者は直感的に目的の場所へアクセスすることができる。この自然な誘導は、利用者の心理的な負担を軽減し、図書館利用への敷居を下げる効果がある。また、スタッフの動線も効率的に設計されており、図書の管理や利用者サービスがスムーズに行える工夫が随所に見られる。バックヤードの配置や作業スペースの確保など、細部にまで配慮された動線計画により、業務効率の向上と利用者サービスの質的向上を両立している。

特筆すべきは、当時の図書館設計において常識とされていた自習室を意図的に設けなかった点である。これは、図書館の本質的な機能を見直し、資料の貸出サービスに重点を置くという明確な方針に基づいた革新的な決断であった。閲覧席も必要最小限に抑えられ、代わりに開架スペースを充実させることで、利用者が気軽に本を手に取り、借りて帰ることができる環境づくりを重視した。この決断は、当時の図書館界に大きな波紋を投げかけ、図書館の役割に関する本質的な議論を喚起することとなった。

この革新的なアプローチの背景には、戦後の日本の図書館が抱えていた根本的な課題への深い洞察がある。当時の多くの図書館は、自習室としての機能が中心となり、本来の図書館サービスである資料の提供が二次的な位置づけとなっていた。この状況は、図書館本来の使命である知識・情報の提供という役割を果たす上で大きな障害となっていた。日野市立中央図書館は、この状況を根本的に見直し、図書館本来の役割を取り戻すことを目指したのである。この決断は、単なる施設計画の問題を超えて、公共図書館の存在意義そのものを問い直す契機となった。

建築的な特徴としても、この図書館は注目に値する要素を多く備えている。外観は周辺環境と調和しながらも、現代的な造形美を追求している。シンプルでありながら印象的なファサードは、公共建築としての品格を保ちつつ、親しみやすい雰囲気を醸成している。内部空間は、自然光を効果的に取り入れる工夫が施され、明るく開放的な雰囲気を創出している。トップライトやハイサイドライトを巧みに活用することで、室内の明るさを確保しながら、直射日光による書籍への影響を最小限に抑える工夫がなされている。また、書架の配置や天井高、照明計画なども、利用者の快適性と機能性を両立させる細やかな配慮がなされている。

図書館運営の観点からも、この施設は画期的な特徴を持っている。効率的な配架システムや貸出手続きの簡素化など、運営面での革新的な試みが随所に見られる。これらの工夫により、限られたスタッフでも充実したサービスを提供することが可能となった。また、利用者の行動パターンを綿密に分析し、それに基づいて空間を構成することで、より使いやすい図書館環境を実現している。さらに、図書館サービスの質を向上させるための様々な運営上の工夫も取り入れられ、後の図書館運営のモデルケースとなった。

この図書館の影響力は、建設後半世紀近くを経た現在でも色あせていない。むしろ、図書館の本質的な機能を追求した先見性は、デジタル時代を迎えた現代においてより一層の輝きを放っている。情報媒体が多様化する中で、図書館の基本的な役割を明確に示した点で、この施設の設計思想は今なお重要な示唆を与えている。特に、利用者本位のサービス提供という理念は、現代の図書館サービスの基本原則として広く認識されるようになっている。

日野市立中央図書館の革新性は、その後の公共図書館設計に大きな影響を与えた。多くの図書館が、この施設をモデルとして、貸出サービスを重視した設計を採用するようになった。また、利用者の行動パターンに基づいた空間構成や、効率的な運営を可能にする建築的工夫など、この図書館で実践された様々な革新的アイデアは、現代の図書館設計における標準的な考え方となっている。この影響は、単に建築設計の面だけでなく、図書館サービスの理念や運営方針にまで及んでおり、日本の公共図書館の発展に大きく寄与している。

このように、日野市立中央図書館は、単なる建築物としてだけでなく、図書館という公共施設の在り方を根本的に問い直した社会的実験としても評価することができる。その革新的な設計思想と実践は、現代の図書館設計において重要な参照点であり続けており、今後の図書館の発展においても示唆に富む事例として位置づけられている。さらに、この図書館が示した「利用者本位」「サービス重視」という理念は、現代の公共施設設計全般においても重要な指針となっており、その影響力は図書館界を超えて広がっている。

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